* 記事ボリュームは10,426文字です。お時間がない方は、冒頭のチャプターの「はじめに」だけをお読みください。なお、本記事の中でご案内する書籍はアマゾン社の商品購入サイトにリンクしておりますが、アマゾンアソシエイト(アフィリエイト広告)は設定しておりませんので、ご安心ください。
はじめに
我が子が発達障害児のお子さんをもつ親御さんにとって、良好な親子関係の長期的維持はなかなか難しいことではないかと思います。
もちろん、「我が子が親の言うことをなかなか聞き入れてくれなくて、つい怒鳴ってしまった」あるいは「ちょっとしたことで、激しい親子喧嘩に発展してしまった」という経験のある親御さんも多いでしょう。私自身もその一人です。
もちろん、健常者の親子関係においても同様のことは日常的に起こりうることです。しかしながら、親子関係悪化の原因が発達障害児の特性に関連する場合は、基本的には親の側が行動を改める必要があります。
なぜなら、発達障害の特性そのものをしつけや教育で改善できるものではないからです。実際、修正不可能なほどの親子関係の悪化の多くは、親が我が子の発達障害特性を正しく理解できていないことが背景にあります。具体的には次の4つです。
① 子供の発達障害特性を正しく理解できていない(例:しつけを厳しくすれば子供の生活習慣は改善する、子供が暴れる原因は親の愛情が足りないからだ、発達障害児の学校教育は基本的にインクルーシブであるべきだ)。
② 我が子の発達障害を受け入れることができない(例:うちの子はやればできるはずだ)。
③ 子供の教育に関して先入観が強い(例: 多少嫌なことがあったくらいで学校を休むな)。
④ 親にも発達障害の傾向がある。
ただ、現実には、上記の4つの課題を認識している親であったとしても、我が子に対する接し方というのは非序に難しいものです。実際、頭では我が子の発達障害特性を理解してしていても、誰でもつい感情的になってしまうこともありますよね。
ところが、そのような親子間の小さないざこざでも長期間にわたって何度も繰り返されると、親子関係に確執や断絶が生まれます。さらには、親子関係の修復が不可能なほどの大きな溝ができてしまうことも珍しくありません。
ちなみに、子供だけでなく親にも発達障害の傾向があるケースは珍しくありません(一定の確率で親子間で遺伝することは周知の事実です)。
その場合、双方が互いに相手の気持ちや立場に配慮する力が乏しいため、ちょっとした喧嘩から大きな確執への発展する可能性がより高いです。
本記事では、単なる喧嘩の域を超えて、修正不可能なほどの親子関係を修復する方法を3段階に分けて順に解説します。
本記事の【結論・要約】は次のとおりです。
● 親子の間に深い信頼関係と愛情があれば、親子関係が悪化しても自浄作用で回復することができる。しかしながら、ちょっとしたいざこざでも長期間にわたり繰り返されると、親子関係は修復不可能なほどの深刻な状況になってしまうことがある。
● 悪化した親子関係の修復において、発達障害児の特性は容易に改善できるものではないので、そのことを前提として親側の考え方や態度の変容を基礎に解決策を探る必要がある。
● 親子関係修復の具体策は次の5つである。
・親の側が何もなかったかのようにさりげなく自然体を装い、普段通りに子供と接する(挨拶、声かけ、家事の段取り)。
・子供の喜ぶことをしてあげる(お土産、おやつ、大好物の食事)。
・いつも以上に、終始一貫してニコニコしている(イライラした態度を見せない)。
・険悪な関係の当事者以外の家族が発達障害児の逃げ道を作ってあげる(例えば、母親と息子との関係が悪化したとき、父親や祖父母が息子を包容)。
・外部の第三者の専門家に仲介してもらいながら、親子関係を段階的に改善する。
● 親子関係修復の仲介役として有効な外部専門家としては、主治医・訪問看護師・療育施設の職員・放課後デイサービスの職員・障害者支援専門員(こども発達支援センターの職員など)・保育士などが挙げられるが、発達障害特性の理解、傾聴力、定期的な面会実績などが必須条件となる。
本記事で紹介する参考文献は、次のとおりです。
● 単行本「発達障害の子どもたちと保護者をサポートする本」 酒井幸子&中野圭子=著
「親子の確執」はどのようにして生じるのか?
本記事で取り上げる親子の確執とは、単なる喧嘩や険悪な雰囲気の状態ではなく、当事者だけでは容易に仲直りすることがほぼ不可能なほどに親子間の断絶が生じてしまったようなケースを想定しています。
具体的には次のようなプロセスを経て親子関係が悪化してきます。
第一段階: 子供の心の中に親に対する強烈な憤りと不信感が生じる(顔の表情や態度に嫌悪感が現れる段階)。
第二段階: 子供が親の言うことをほとんど聞かなくなる(親に対する反抗的態度が常態化する段階)。
第三段階: 親から話しかけられても子供は無視する(我が子が親からの携帯電話・ライン・メール・チャットなど着信拒否も含む:親子の機能不全の初期段階)。
第四段階: 親子関係の悪化がきっかけで、子供に不登校・引きこもり・暴力などの行動変化が起こる(子供に発達障害の二次的障害が現れる段階)。
多くの場合、これら3つの行動は上記4つの各段階の順に引き起こされます。第三段階では当事者同士の話し合いでは解決が困難な状態です。
第四段階の状態になると、親子関係の改善というレベルではなく、もはや医師や教師などの外部の専門家の協力のもとに子供の行動障害への対応が主となってしまいます。
ですから、親としては第四段階になる前に適切な解決策を実行しなければなりません。
親子関係を修復する5段階
上述のとおり、修正不可能なほどの親子間の確執を修正する方法は親子間の確執のレベル(上記①②③④)によって異なります。例えば、確執レベル③の場合、次の3つの修復方法を順にたどることが必要です。
A: 親の側が何もなかったかのようにさりげなく自然体を装う。
B: 子供の喜ぶことをしてあげる(お土産、おやつ、大好物の食事)。
C: いつも以上に、笑顔でニコニコする(イライラした症状を見せない)。
D: 険悪な関係の親子以外の家族(親・兄弟姉妹・祖父母)が発達障害児の逃げ道を作ってあげる。
E: 外部の第三者を仲介して親子関係を改善する。
例えば、父・母・息子(小学5年生の発達障害児)・娘(息子の妹)の4人家族において母親と息子との間に確執が生じた場合を想定してください。次の章では、具体的な親子関係修復法を紹介します。
親子関係修復法 A:いつもと同じように家族と接する。
母親は、まずは日常生活において上記Aを試してみます。具体的には次のとおりです。
① 挨拶(おはよう、いってらっしゃい、お帰りなさい、おやすみ)や声かけ(ご飯できたよ、お風呂に入ってね)をいつもと同じトーンでする。
② お弁当の準備、習い事や放課後デイサービスなどの送り迎え、食事や洗濯などの家事をいつもと同じような段取りでする。
③ 発達障害の息子の前で、母親は夫や娘といつもと同じように接する。
ステップAで重要なことは、「家族全員に対する接し方」と「家事の段取り」を全く変えないように気をつけることです。つまり、「発達障害の息子と険悪な関係になったとしても、家族への愛情は変わらないよ」という母親からのメッセージを息子に行動で示すということです。
このとき、重要なポイントがあります。まず、上記①の場合、息子への挨拶や声かけのトーンがいつも通りであるということです。息子への苛立ちがあると、つい言葉のイントネーションが強くなったりしないように気をつけることです(やや怒鳴り気味だったり、吐き捨てるように言ったりしたらダメですよ)。
上記②の場合、親の行動が我が子の行動パターンに影響を与えないように気をつけることが重要です。例えば、いつもは和食のお弁当が子供の許可なく急にサンドイッチなったりしないようにしてください。また、習い事や放課後デイサービスの送り迎えの時間や家事の段取りをいつもと同じようにしてください。
これはASD(自閉スペクトラム症)の子供の中には決められたルーティンをちょっと乱されるだけでも嫌な気持ちになることがあるからです。ましてや、険悪な親子関係の状態ですから、さらに親子関係が悪化することを予防するためでもあります。
上記③は意外と効果抜群のことがあります。これだけで、親子が仲直りできてしまうこともあります。具体的には、「買い物ついでにお土産を買ってきてあげる、いつもよりちょっと豪華なおやつを出してあげる、大好物のおかずを夕食に出してあげる」などです。
不思議なもので、どんな子供でも親から親切にされると、「返報の法則」のような作用が働いて「子供は親に対して甘えてもいいんだ」と安心するのです。
最後に上記③について解説します。これは、発達障害児の息子さんが家族みんなと安心して過ごせるようにするための方策です。
例えば、息子さんの目の前で、母親が娘(息子の妹)に微妙にカリカリしながら話していると、息子さんはそれを敏感に察知します。そうすると、息子さんの心はますます母親から遠ざかってしまうのです。
多くの場合、親子の確執のレベルが小さいときは、母親がいつもどおりの自然体で温厚にしていると、母親に対する「息子さんの怒りと不信感」は時間の経過とともに徐々に消えていきます。
不思議なもので、親が想像している以上に、子供は母親の顔の表情や態度をよく見ています。
そして、息子さんが母親の態度から「母親は自分を嫌っているわけではないんだ」ということを悟ったときに漸く心を開いてくれると思いますよ。
親子関係修復法 B: 子供が喜ぶことをしてあげる。
「子供が喜ぶことをしてあげる」といことは、ある意味で機嫌取りのように思われるかもしれませんが、意外と効果抜群のことがあります。これだけで、親子が仲直りできてしまうこともあります。具体的には、次のとおりです。
① 買い物ついでに(または仕事の帰りに)、お土産を買ってきてあげる。
② いつもよりちょっと豪華なおやつを出してあげる。
③ 大好物のおかずを夕食に出してあげる。
④ 記念日(誕生日・クリスマス・お正月)のプレゼントをうまく利用する。
発達障害児は食べ物の好き嫌いが激しいという特性があります。そこで、子供さんの好物のおやつやおかずを提供してあげることで、一気に機嫌が回復することがあります。
上記④は上記③を実行するうえで、記念日を利用する方法です。親子関係がこじれたタイミングの少し先に子供の誕生日、クリスマス、お正月などがあれば、ちょっと奮発して好きなものを買ってあげると仲直りの良い機会になりますよ。
不思議なもので、どんな子供でも親から親切にされると、「返報の法則」のような作用が働いて「子供は親に対して甘えてもいいんだ」と安心するのです。
最後に④について解説します。これは、発達障害児の息子が家族みんなと安心して過ごせるようにするためです。
例えば、息子の目の前で、母親が娘(息子の妹)に微妙にカリカリしながら話していると、息子さんはそれを敏感に察知します。そうすると、息子さんの心はますます母親から遠ざかってしまうのです。
多くの場合、親子の確執のレベルが小さいときは、母親に対する「息子の怒りと不信感」は時間の経過とともに自然と消えていきます。
不思議なもので、親が想像している以上に、子供は母親の顔の表情や態度をよく見ています。そして、息子さんが母親の態度から「母親は自分を嫌っているわけではないんだ」ということを悟ったときに漸く心を開いてくれると思いますよ。
親子関係修復法 C:いつも笑顔でニコニコしている。
● ニコニコ笑顔の効用
さて、上述の親子関係修復法AとBを実施するときに、同時並行でやると相乗効果が抜群という秘法があります。
それが、「いつも笑顔でニコニコしている」ということです。ニコニコ顔の効用は、シンプルでわかりやすいと思いますが、要するに「家庭内の雰囲気を明るく平和にする簡便法
」です。
できれば、夫婦間で申し合わせて、夫婦でともにニコニコするように努めるとよいですね。実は、子供の目に夫婦仲がよいように映ると家庭円満効果がさらにアップします。
● ニコニコ顔を継続するコツ
ちなみに、ニコニコ顔を継続するコツがありますので、紹介します。私が数年かかって経験的に編み出した笑顔継続法は、次の4つです。
・ 歯磨き、トイレ、手洗いなど洗面所に行ったときに、鏡に向かってニコッと微笑むことを習慣付ける。
・仕事のデスクの上に小さな鏡を置いて、ときどき自分の顔を映して微笑む(この方法は私が会社で担当している通販事業部のコールセンターでコミュニケーターの笑顔継続法として実施しています)。
・スマートフォンを見た後、画面をシャットダウンして、黒い画面にうっすらと映った自分の顔を見てほほ笑む。
・定期的にお笑い系の動画を見て、マジで笑う。
親子関係修復法 D:険悪な関係の親子以外の家族(親・兄弟姉妹・祖父母)が発達障害児の逃げ道を作ってあげる。
●親の役割
母親と息子(発達障害児)が大喧嘩している状況で、父親の役割は非常に大きいです。その役割のひとつが、「息子の言い分をしっかり聴いてあげる」ということです(もちろん、父親と娘が険悪の仲になってしまったときは、母親が聴き役になります)。
このとき、父親は「息子の言い分を決して否定しない」ということが重要です。仮に、「息子は嘘をついているかもしれない」と心で思ったとしても、直ちに否定してはいけません。
まずは、じっくりと話を聴くことだけに専念してください(聴き方の詳細は、2022年4月15日の配信記事「親は障害児の内なる声を聴け」を参照ください)。
「親が子供の声を否定せずに聞く」というプロセスを通じて、子供と親の信頼関係が培われていきます。同時に、子供は聴いてもらうことによって、傷ついた心と怒りが少しずつ癒されていきます。
ちなみに、父親が子供の言い分を聴くときに、自宅だと落ち着かないこともあります。そんなときは、一緒に散歩に出かけるとか、近くのカフェに行ってのんびりコーヒーでも飲みながら会話するなどして環境を変えると、子供がリラックスできて素直に話してくれることもあります。
そして、話を聴き終わった時、父親が「私はあなたの味方だよ」と息子に伝えてあげると、子供は確執を生んだ母親から精神的に逃げることができます。
この道筋を作ってあげることができると、親子間の関係修復とまではいかないまでも、これ以上の関係悪化を予防することができます。
【私の体験】
上記の設定(母親と発達障害の息子との確執)において、父親は発達障害児の逃げ道を作ることが重要な役割であると申しましたが、それと同じくらい母親の側にも逃げ道を作ってあげることが大切でないかと考えています。
母親(妻)は大人と言えども、やはり感情のある人間ですから、父親は母親の側の言い分もしっかり聴いてあげて理解を示してあげることが大事です。それをするかしないかで夫婦関係の良し悪しも変わってきます。
つまるところ、夫婦関係を良好に保つことが家庭円満につながり、その結果として家庭全体に漂う平和な雰囲気が不安な子供の気持ちを癒していくこともありますから。
● 祖父母の役割
ちなみに、この逃げ道つくりの役割は、必ずしも親でなくてもかまいせん。祖父母がその役割を引き受けてくれることもあります。
そういう意味においては、親子間で確執が生まれたとき、子供を連れて実家に1~2日ほど帰省するというのも親子関係修復の効果的な方法です。
● きょうだい児の役割
また、あるときは、逃げ道つくりの役割をきょうだい児が自発的に引き受けてくれることがあります。
特に、発達障害児に兄または姉がいるときは、子供ながら兄弟愛とでもいいましょうか、年下の子をいたわる本能のようなもので、発達障害児の弟を包み込んでくれることがあります。
さらに、子供同士であるがゆえの共感がそれにうまく相まって、弟の心が癒されるのだろうと思います。
親子関係修復法 E:外部の第三者を仲介して、親子関係を改善する。
● 相談できる外部専門家の条件
上記の親子関係修復法ABCDの4つを実行してもなかなか改善しないときの最終手段がEです。
要するに、「家族内では解決できないので、やむなく外部の専門家の力を借りよう!」という発想です。
外府の専門家と言いましても、学校関係者・医療関係者・民間の教育事業者など多種多様な方々がいらっしゃいます。その中で、親子関係改善の仲介役としては、次のような3つの条件が必要だと考えています。
① 発達障害特性を理解している人
② 話をしっかり聴いてくれる人
③ 1週間に1回以上の定期的面会がルーティンとしてできる人
まず、上記①の「発達障害特性の理解」は言うまでもなく必須条件です。なぜなら、親子関係悪化の当事者である発達障害児の特性は容易に改善できるものではないので、そのことを前提として親側の考え方や態度を変えさせる必要があるからです。
上記②については、第三者に親子関係悪化の経緯を正確に把握していただくために必須の条件です。その際に、事実関係の認識理解に長けているだけでなく、悩み深い親の気持ちに共感できる人が適任です。むしろ、後者の能力の方が大事なくらいです。
最後に③について解説します。「1週間に1回以上の定期的面会」という条件を付けた意図は、親子関係の経時変化を把握できて且つ親からの相談にも臨機応変に迅速対応できる方ということです。
親子間の確執の大きさにもよりますが、私の経験上、しこりを残さない程度の親子関係の回復には早くても3週間程度かかることが多いからです。
● 利用するべき外部専門家の事例
上記3つの仲介者条件に合致する外部専門家としては次の5つです。
・主治医
・訪問看護師(1週間に1回以上の訪問が前提)
・療育施設や放課後デイサービスの担当者
・発達障害支援員(発達障害者支援センターまたは児童福祉センターの職員など)
・保育士
・スクールカウンセラー
もちろん、子供が通う学校の担任教師・校長あるいは民生委員の方の中にはとても親切に相談に対応していただける方もいらっしゃいますが、発達障害への理解レベルにおいて個人差が大きいため対象から外しています。
ちなみに、発達障害の専門家とまでは言えない保育士を適任相談者として挙げた理由は、「ASD(自閉スペクトラム症)は幼少期(2〜5歳)に発見されやすいこと」「担当の子供の数が20人以下ですと子供ひとりひとりに対する観察機会が多いこと」「親の側の子育て経験が未熟であること」「毎日の送り迎えのときに母親と話す機会があること」という状況の中で、保育士は母親にとって最も身近で相談しやすい立場にあるからです。
我が家では、親子関係の修復のみならず、関係悪化の予防策として訪問看護師をうまく利用しています。親子間での問題が生じたときは率直に訪問看護師と情報共有して、発達障害児の心のケアに務めていただいています。
● 医師を仲介役として解決策を探る方法
親子関係の修復法と発達障害児へのケアの仕方について、訪問看護師が親の側を諭してもなかなか親の態度や考え方が改まらないときは、主治医の出番になります。
このとき、主治医の権威性と実績が意外と効力を発揮することがあります。主治医の指導内容はどうであれ、医学的な根拠や経験則を盾に指導されると、頑固な態度を示していた親の側も納得して素直に医師に指示に従うということも珍しくありません。
特に、子供だけでなく親の側にも発達障害の傾向があるときは、夫婦間や親子間での話し合いでは解決が難しいことが多く、第三者の仲介が必要になります。
【私の体験】
我が家では、過去10年間で母親(私から見ると妻)と息子の確執は頻繁にありました。そんなときに頼りにしたのが、主に訪問看護師と発達障害支援員(こども発達支援センターの職員の方)です。
ちなみに、妻もADHDとASDの傾向があり、適応障害(症状としてはうつ)を患っていますので、往々にして息子とのコミュニケーションが母親からの一方通行になってしまうことが多いです。
2カ月ほど前にも、息子が精神不安定で心療内科に入院中に、母親からの一方的な指示(コロナのワクチン接種)に耐えかねた息子が私にSOSを出してきました。
実際、「息子は母親からの電話・ライン・メール・チャットなどすべての通信と面会を拒絶」という問題に発展しました。それゆえ、私が母親に代わって息子のケアのために息子が入院している病棟に出入りすることとなりました。
私は妻と息子の言い分をそれぞれ聴いて母子の関係悪化を改善しようと試みましたが、どちらかというと妻の方が頑なに態度を改めようとしませんでした。そこで、妻が通院している担当医に仲介役として問題解決に協力してもらうことにしました。
担当医に宛てた手紙を次のとおり公開します。医師がどのように妻をさとしたのかは定かではありませんが、結果として妻も穏やかになり息子が退院して2週間ほどで親子関係はかなり改善しました。
● 障害児相談支援サービスの利用
小学2年生の息子さん(ASD)の母親のきみかさんは音声配信サービス Voicy「発達障害児子育て虹色の朝陽」の中で、「児童福祉法に基づく障害児を対象とした相談支援サービス」を紹介されています。詳細は次のとおりです。
【虹色の朝陽さんの事例】
虹色の朝陽さんのお母さんのきみかさんが役所の子育て相談室に療育の相談に行ったところ、「障害支援専門員の紹介を受けた」ことがこのサービスを知ったきっかけだったとのことです。実際、障害支援専門員の方に子育てに関する悩みや要望を聴いていただけたそうです。
引用元: 音声配信サービス Voicy「発達障害児子育て虹色の朝陽」 ”相談支援専門員さんを利用している?” 2022年7月29日配信
障害者相談支援サービスとは、身体に障害のある児童・知的障害のある児童・精神に障害のある児童(発達障害児を含む)又は難病を有する児童を対象とした通所利用にかかる支援制度のひとつです。
サービスの質においては地域によって若干の格差があるようですが、主に放課後デイサービスの利用手続きや計画作成などの支援を受けることができるようです。
私自身はこのようなサービスを受けた経験はありませんが、親子関係の悩みについても対応いただけるのであれば、利用してみる価値はありそうですね。
● 保育士が母親と子供の関係修復を支援した事例
最後にご紹介する関係修復法は、「働き始めたお母さんと保育園年中のお子さんとの関係修復を保育士が自発的に支援する方法」です。
書籍「発達障害の子どもたちと保護者をサポートする本」(酒井幸子=著)から引用した事例が次のとおりです。
年少時から保育園に通う女の子が年中になったあたりから赤ちゃん返りが始まりました。具体的には、次のような問題行動が見受けられ、だんだんと激化していきました。
・登園時に泣いて、玄関でぐずったまま部屋に入ってこない。
・散歩に出かけるときに「行きたくない」と駄々をこねる。
・お昼の時間になっても部屋に戻らず、砂場でいつまでも遊んでいる。その時期がちょうどお母さんが仕事を始めたタイミングと一致したことから、園の保育士は「娘さんがお母さんと過ごす時間が減ってしまったことが、赤ちゃん返りの原因ではないか」と考えました。
あるとき、癇癪を起こした娘さんを園まで迎えに来た母親に、担当の保育士が「娘さんが精神的なストレス状態であること」「娘さんが親の愛情に飢えていること」を伝えたうえで、「1日にほんの数分でもいいですから、娘さんと二人きりの時間を作って思う存分甘えさせてあげてください」とお願いしました。
母親は「下の兄弟の手がかかるので、つい娘のことを後回しにしていました。この子に辛い思いをさせていたのですね。今日から、甘えさせる時間を作るように努めます」と言いました。
その後、園と母親が娘さんの変化を事細かく報告し合いながら暖かく接しているうちに、娘さんの赤ちゃん返りは少しずつおさまっていきました。
引用元: 単行本「発達障害の子どもたちと保護者をサポートする本」 酒井幸子&中野圭子=著 p184 – 186 から一部を引用して要約
このパターンは、上述で紹介してきた事例とは異なり、「親子関係の悪化を母親がしっかりと認識できていないときに第三者が母親に気づきを与える方法」と言い換えることができます。
本件は、保育士が子供と母親の両者と毎日接しているからこそ早期に親子関係の問題に気づくことができた事例であり、まさに保育士というプロがなせる観察眼と指導力の賜物ですね。
参考情報
● 書籍「発達障害の子どもたちと保護者をサポートする本」酒井幸子(母子愛育会愛育幼稚園長・武蔵野短期大学客員教授 同附属保育園長)&中野圭子(臨床発達心理士・公認心理士)=著
● 【投稿記事】「発達障害者の声を聴く」とは? 親子の在り方を考えよう!
● 【まとめ記事】子育て/家事/仕事の両立
● 【まとめ記事】発達障害者/家族の有名人(Wikipedia・学歴・著書)
● 【まとめ記事】発達障害に関する参考コンテンツ(書籍・動画・芸術・報道)
以上
2022年7月31日
マメタ父さん