はじめに
本投稿では、ショートショート 第23作 「創作詩 ”聖書にまつわる発達さん” 」を発表します。
世界で一番売れている書籍は聖書です。聖書にはいろいろな障害者が登場します。果たして、発達障害者はどのように描かれているでしょうか? 今回は、聖書にまつわる発達障害者を詩に紡ぎました。
《創作ショートショートのテーマ》
辛い毎日から逃れるために、思考と感情のバランス調整の一環として詩や掌編小説(ショートショート)の創作を始めました。
「発達障害児の世界」と「健常の大人の世界」とが不連続に交錯融合する「奇妙で切ない不条理の世界」が主題です。具体的には、発達障害者・精神障害者・生きづらさを感じている人々・世の中の偏見や差別に苦しんでいる人々が登場する物語です。
携帯電話の画面で詩をご覧の方は、携帯電話を横向きにしていただくと詩の各文が改行しませんので、より読みやすくなります。できましたら、パソコンの画面でご覧ください。各連および各行のレイアウトの美しさを味わうことができます。
本編:聖書にまつわる発達さん
聖書にはいかなる障害者が登場するや?
・レビ記には障害のある人が遺されている。
・目が見えない者、
・手足が短すぎたり長すぎたりしている者、
・手や足の折れた者、
・くる病や肺病で痩せた者、
・目に星のある者、
・湿疹やかさぶたのある者、
・睾丸のつぶれた者、
・彼らは「神の食物として捧げられたパン」を食べることができた。
・ならば発達障害の人はいかほどに?
・それっぽい人はいるような・・・
・イエスはどうか?
いや、違う!
・パウロはどうだろう?
いや〜、違うような気がする!
・放蕩息子はそうではないか?
ん〜、確信はない!
・発達障害が顕著な人はどうも見当たらない・・・
・800年前、修道士のジネプロはちょっと変わった人だった。
・彼は巡礼中にローマ市民に迎え入れらたとき、
近くにあったシーソーに夢中になり、
市民を無視してシーソーをこぎ続けた。
・一度に2週間分の食事を作ってしまい、
修道院長からこっぴどく怒られた。
ところが、彼は反省する素振りも見せず、
怒鳴りすぎて声が枯れてきた修道院長を心配して、
暖かいオートミール粥を入手して差し出した。
あぁ、お前はこんなところにいたんだね。
おわり
編集後記
●聖書に記された「障害者」とは?
旧約聖書のレビ記(21.21-22)には「身に欠陥のある者」として11つの実例が記されています。本詩の第一連では、類似する疾患を整理して7つにまとめました。
身に欠陥のある者は神が聖別した特別な存在であるがゆえに、「健常者が神に供えた食べ物」を一定の時間が過ぎれば食することが許されていました。
●修道士のジネプロとは?
フランシスコ会修道士サンタマリアのフラ・ウゴリーノの14世紀前半の書「聖フランチェスコの小さな花」の”修道士ジネプロ伝”に記述されたジネプロ(13世紀に活躍した修道士で聖フランチェスコの弟子)の言動の中から発達障害と推察できるエピソードを本詩に組み込みました。
発達障害特性を示唆するジネプロの言動としては、本誌以外にも次のようなエピソードがあります。
・ジネプロは布教の帰りに物乞いに自分の僧服を与え、修道院に裸で帰ってきた。それを見た兄貴分の修道士フランチェスコは「許可なく僧服を人に与えてはいけない」と彼を叱った。
・ある修道士が病気になり、食欲が落ちて元気がなかった。ジネプロが「何か食べたいものはあるか?」と聞くと、彼は豚足が食べたいと答えた。ジネプロは彼のために豚を探し、藪の中にいた豚の足を切り取った。豚の持ち主である農夫はそれを知って激怒し、兄貴分の修道士フランチェスコに苦情を言った。フランチェスコはジネプロに対して、「農夫にしっかり謝って、彼の怒りを静めるためにありとあらゆることをしなさい」と命じた。
ちなみに、彼の一連のエピソードは、1950年に公開された映画「神の道化師、フランチェスコ」とに中で演出されています。
参考情報
●【まとめ記事】その他のショートショート(詩または掌編小説)
●【まとめ記事】毎日が辛い当事者へ
●【投稿記事】創作詩:信仰が挫折した祈り(絶望と諦念を超えた祈りとは?)2024年8月25日 投稿
●【投稿記事】創作詩:方舟(機能不全家族のメタファー)2024年9月1日 投稿
以上
2024年10月3日
香月 融