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発達障害者家族は正解がない問題にどう答えるべきか? ボブ・ディランさんの歌詞「風に吹かれて」を読み解く!

はじめに

 2022年1月25日、「米国シンガーソングライターのボブ・ディラン(2017年にノーベル文学賞を受賞)さんが楽曲の原盤権をソニーミュージックエンタテインメントに売却!」とのニュースが報じられました。

引用元: ボブ・ディランの Wikipedia に掲載の本人写真「「Azkena Rock Festival」に出演するディラン(2010年6月26日)」

 私が彼の歌を知ったのは中学生時代だったと思います。フォークソングが全盛期の時代、日本国内でも彼の歌はそこそこヒットしていました。ちなみに、本記事で紹介するボブ・ディランさんの名曲「風に吹かれて」は英語の授業でも使われていました。
 ところが、その当時の私はポップミュージックが好きで、ボブ・ディランさんの音楽には全く興味がありませんでした。

 彼の歌を聴いたり口ずさんだりするようになったのは、この3年くらいでしょうか? 不思議とそのタイミングは、発達障害の子供たちと向き合うようになった時期と一致します。

 私がボブ・ディランさんの曲を聴く時は、だいたい「発達障害の子供たちやうつ病の妻の対応で精神的に行き詰まったとき」でした。そんな時、彼の数ある素敵な曲の中でも、「風に吹かれて」に何度も救われました。

 ただ、「この曲が慰めや癒しになった」というわけではないんです。 どう表現して良いのか、適切な言葉が見当たりませんが、「雑念が穏やかに消えていく」あるいは「自分に与えらえた苦難を素直に受け入れよう」というような前向きな感情への変化が起こるのです。

発達障害者家族の私にとっての「ボブ・ディランの歌詞」

 ボブ・ディランさんの「風に吹かれて」の歌詞の原文(英語)を発達障害者家族の立場で私なりに意訳してみました。

Blowin’ in the Wind
風に吹かれて

How many roads must a man walk down before you call him a man ?
どれだけ努力すれば、発達障害者は普通の人と同じように扱ってもらえるのだろうか?

How many seas must a white dove sail before she sleeps in the sand ?
渡り鳥は海の上をどれだけ飛び続ければ、砂浜で休むことができるのだろうか?

Yes, and how many times must the cannonballs fly before they’re forever banned ?
発達障害者と健常者がどれだけ対話を重ねれば、互いの断絶を永久になくすことができるのだろうか?

The answer, my friend, is blowing in the wind
私の同胞よ、答えは風と共に舞っている。

The answer is blowing in the wind
そして、答えは風と共に通り過ぎていく。

Yes, and how many years can a mountain exist before it is washed to the sea ?
この大地が海に侵食されるまで、一体、どれほどの年月が流れるのだろうか?

Yes, and how many years can some people exist before they’re allowed to be free ?
私たち発達障害者が自由を手にして社会に受容されるまで、どれくらいの年月が流れるのだろうか?

Yes, and how many times can a man turn his head ?
人は、障害者差別を何度繰り返すのだろうか?

And pretend that he just doesn’t see ?
人は、私たちの苦悩を見て見ぬ振りを何度繰り返えせば気が済むのだろうか?

The answer, my friend, is blowing in the wind
私の同胞よ、答えは風と共に舞っている。

The answer is blowing in the wind
そして、答えは風と共に通り過ぎていく。

Yes, and how many times must a man look up before he can see the sky ?
私の眼前に美しい青空が現れるまで、あと何回天を仰げばいいのだろうか?

Yes, and how many ears must one man have before he can hear people cry ?
人は、障害者の嘆きにしっかりと耳を傾けてくれるだろうか?

Yes, and how many deaths will it take ‘til he knows that too many people have died ?
人が多数の犠牲者の歴史に気づくまで、あとどれだけの死がもたらされるのだろうか?

The answer, my friend, is blowing in the wind
私の同胞よ、答えは風と共に舞っている。

The answer is blowing in the wind
そして、答えは風と共に通り過ぎていく。

英語原文の引用元:書籍「The Lyrics 1961ー1973」 ボブ・ディラン1=著 佐藤良明=訳 岩波書店 2020年 発行 香月融=上記の英語歌詞の日本語訳

答えは風と共に舞っている。

 結局のところ、この詩の一節「The answer is blowing in the wind」の通り、正解なんてないんだよね。 仮に正解があったとしても掴みようがないんですよね。なんとなく、仏教の「空の思想」と通じるような気がします。
 あえて正解を言語化するとすれば、「この苦難を定めとして受け入れるしかない」ということかもしれません。

 かつての私は正解がない問題であるにもかかわらず、なんとか解決しようともがき続けていました。結果的に、何一つうまくできませんでした。

 他人を信用できなくなったときもありました。それどころか、家族関係すらも崩壊寸前まで追い込まれました。

 息子(ADHD)、娘(ASD)、妻(うつ)のそれぞれの主治医からは異口同音に「問題について家族内でよく話し合ってください」と言われました。私の経験上、話し合いで解決したことはほとんどありません。
 ただ、振り返ってみると、「ある時、偶然に起こった出来事がきっかけとなって、本人に気づきのようなものが芽生えて、家族を通貫していた流れが変わる」ということが稀にありました。 

 もしかすると、この不可解な出来事が上述の「The answer is blowing in the wind」ということかもしれません。

 これからも試練の連続だと思います。それでも、私たち障害者家族は互いに力を合わせて歩んでいきます。たとえどこかでつまづいても、きっと誰かが必ず助けてくれると信じているから。

参考情報

● 書籍の紹介
ボブ・ディラン(米国の歌手・シンガーソングライター: 2016年ノーベル文学賞・受賞
書籍「The Lyrics 1961ー1973」 ボブ・ディラン=著

●【まとめ記事】毎日が辛い当事者へ

●【まとめ記事】発達障害に関する参考コンテンツ(書籍・動画・芸術・報道)

以上

2022年1月26日

マメタ父さん