はじめに
本投稿では、ショートショート 第十作 「創作詩 ”創造のみなもと” 」を発表します。
私が詩や小説を書いたり絵を描いたりする理由は、発達障害者家族としての「鬱積した無意識」を具現化するためです。実際、作品が完成した直後は、ほんの少しだけ癒されたように感じます。今回は、詩や絵を構想するときの感覚を詩にしてみました。
一方、本詩では発達障害者家族の「母性と父性」および「感情と思考」の二項対立を比喩的に表現しています(参考記事:さだまさしさんの歌詞「道化師のソネット」を読み解く!)。ちなみに、今回はシンメトリーな定型と七五調にこだわりました。
《創作ショートショートのテーマ》
辛い毎日から逃れるために、思考と感情のバランス調整の一環として詩や掌編小説(ショートショート)の創作を始めました。
「発達障害児の世界」と「健常の大人の世界」とが不連続に交錯融合する「奇妙で切ない不条理の世界」が主題です。具体的には、発達障害者・精神障害者・生きづらさを感じている人々・世の中の偏見や差別に苦しんでいる人々が登場する物語です。
本編:創造のみなもと
吾輩は 画家と詩人の 二面相
絵を描くときは
詩を書くような 文体で
右脳ウニウニ
詩を書くときは
絵を描くような 色調で
左脳サクサク
みなもとは 右と左の 補完系
終わり
編集後記
●素直な解釈
深読みせずに、本詩を文字通りシンプルに解釈していただいてもOKですよ。実際、私は絵や詩の構想を練っているとき、左脳の言語中枢と右脳のイメージ中枢が互いに共鳴し合いながら働いているような感覚があります。
私は感性で絵を描くタイプの画家ではありません。実際の作業手順は次のような段取りです。まず、絵画テーマに応じて、徹底的に取材をします。そうして収集した資料(文学・美術・音楽・土木建築・自然・科学技術など)を論理的に分解・整理・分析して図解にします。
その中から選択的に抽出した断片を再構成することによって創出された物語の一場面を図像として描き出します。
一方、私が詩を構想するときは、言葉ありきではなく、まず最初に抽象画のようなイメージが頭の中にふわっと湧いてきます。なんとなく白昼夢を見ているような心地です。
具体的には、詩の構成パターンが形・色・サイズとして現れます。私の詩が規則的な連(詩節)と頭韻脚韻の組み合わせから成る「シンメトリーの定型詩」である所以です。
イメージした形(定型と韻律)と色(感情)に応じて、後から言葉を当て込むような手順で、まずは散文を作成していきます。文字数や行数はイメージしたサイズに概ね合致しますが、韻律は複数回の校正で整えます。タイトルは本文ができあがってから付けることが圧倒的に多いです。
●挿絵およびサムネイルの画像
上記の挿絵およびサムネイルの背景画像は、18〜19世紀に活躍したロマン派の巨匠ウィリアム・ブレイクの詩集「無垢と経験の歌」に収められている詩篇「虎」の挿絵です(日本でも有名)。挿絵の上段にタイトルが、中央に詩が、下段に虎の絵が刻まれています。
彼もまた画家と詩人の両利きキャリアです。さらに、この詩集は「無垢」と「経験」の二項対立がテーマになっています。それゆえ、コンセプトとしても構造的にも同類である本詩の挿絵とサムネイルに、彼の詩篇「虎」を刻んだ挿絵を転用しました。
ちなみに、知的障害の子を持つ大江健三郎さん(1994年ノーベル文学賞)の小説「新しい人よ眼ざめよ」は、ウィリアム・ブレイクの詩「ミルトン」の一節「Rouse up, O, Young men of the New Age !」からインスピレーションを得たと言われています。
参考情報
●【まとめ記事】その他のショートショート(詩または掌編小説)
●【まとめ記事】マメタ家の紹介と近況報告
●【まとめ記事】発達障害者家族の有名人の作家カテゴリーにて、大江健三郎さんの作品を紹介
●【投稿記事】さだまさしさんの歌詞「道化師のソネット」を読み解く! 発達障害者家族の悲しみを笑いに転化するには?にて、発達障害者家族の母性と父性について言及
以上
2024年8月27日
香月 融