ショートショート

創作詩13:海辺のドッペルゲンガー

創作詩「海辺のドッペルゲンガー」のサムネイル(親子の隔絶と父親の孤独)

はじめに

本投稿では、ショートショート 第19作 「創作詩 ”海辺のドッペルゲンガー” 」を発表します。

 我が家は海のすぐ近くにあります。休日の晴れた朝は、ちょこっと海岸を散歩すると気持ちいいですね。青い海、潮の香り、波音、砂を踏む感触などすべてが癒しになっています。 
 ただ、私は家族関係の悩みが深く、稀におかしくなりそうなときがあります。ドッペルゲンガー(ドイツ語:  Doppelgänger)とは、自分自身の姿を自分で見る幻覚の一種です。

 今回は、私自身の人生を振り返り、海辺での不思議な体験を詩に紡ぎました。


《創作ショートショートのテーマ》 

 辛い毎日から逃れるために、思考と感情のバランス調整の一環と、して詩や掌編小説(ショートショート)の創作を始めました。

「発達障害児の世界」と「健常の大人の世界」とが不連続に交錯融合する「奇妙で切ない不条理の世界」が主題です。具体的には、発達障害者・精神障害者・生きづらさを感じている人々・世の中の偏見や差別に苦しんでいる人々が登場する物語です。

 携帯電話の画面で詩をご覧の方は、携帯電話を横向きにしていただくと詩の各文が改行しませんので、より読みやすくなります。できましたら、パソコンの画面でご覧ください。各連および各行のレイアウトの美しさを味わうことができます。

本編:海辺のドッペルゲンガー


神無づき、
我が家の テラスから、
のぞむ港の 幽玄たるや・・・

月曜の夜明け前、
ヘッドライトが時折行き交う、
湾岸道路を自転車で疾走するスーツ着の
青年Kを見た。

火曜の早朝、
薄らピンクの空にミャーオと響く鳥の声、
あちこち多動な子kの手を引いて幼稚園に向かう
若者Kを見た。

水曜の真昼間、
テラテラと輝く太陽の下、
妙に突き出した堤防の末端で怒鳴り合う
美少年kと壮年男Kを見た。

木曜の昼下がり、
横殴りの潮雨に煽られながら、
必死で誰かを探し回る髪茫々髭面の
中年男Kを見た。

金曜のおやつ時、
肌を突き刺す銀の汐風、
浜辺の剥げたベンチに一人腰を下ろす
詩人Kを見た。

土曜の夕暮れ前、
泥岩の鱗雲に包まれて、
黄色いサザ波が映える海をうつろに眺める
画家Kを見た。

日曜のたそがれ、
灯台下に淡く立ち込める靄、
辺りをキョロキョロしつつ待てど暮らせど
野良猫一匹たりとも見えない。

やがて深更、
家も港も 闇に溺れて、
なみ音だけが 遠くに残る・・・

おわり

脚注:2行目の「我が家」は ”わがいえ” と読む。

イメージ画像「霧が立ち込める海」のイラスト

参考情報

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2024年9月21日

香月 融