ショートショート

創作詩3: 信仰が挫折した祈り

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はじめに

本投稿では、ショートショート 第九作 「創作詩 ”信仰が挫折した祈り” 」を発表します。

 これまで、発達障害にともなう強度行動障害(暴言暴力・自傷・他害・家出・ひきこもり・不登校など)の我が子の回復を願って、私はありとあらゆることをしてきたつもりですが、全くの無力でした。ついには、自然や宗教にまで救いを求めましたが、なんの変化もありませんでした。


《創作ショートショートのテーマ》 

 辛い毎日から逃れるために、思考と感情のバランス調整の一環として詩や掌編小説(ショートショート)の創作を始めました。

「発達障害児の世界」と「健常の大人の世界」とが不連続に交錯融合する「奇妙で切ない不条理の世界」が主題です。具体的には、発達障害者・精神障害者・生きづらさを感じている人々・世の中の偏見や差別に苦しんでいる人々が登場する物語です。

 なお、携帯電話の画面で詩をご覧の方は、携帯電話を横向きにしていただくと詩の各文が改行しませんので、より読みやすくなります。できましたら、パソコンの画面でご覧ください。各連および各行のレイアウトの美しさを味わうことができます。

本編: 信仰が挫折した祈り


かくして、苦節七年、家族・学校・病院・役所でやれることは全てやった。

やむなく、海に向かって祈りを繰り返した。
・憑かれたように、海岸通りをふらついた。
・潮の香、汐風、波音、透いた水色、摂った青魚に感謝した。
・毎日、浜辺のゴミ拾いもやった。
なんにも、御利益はなかった。

やむなく、ご先祖の供養を繰り返した。
・お墓にお花とお酒とお線香を供え、手を合わせた。
・故人の命日が来る度、お坊さんを呼んだ。
・毎週末、お仏壇の前でもお経を朗読した。
なんにも、御利益はなかった。

やむなく、お寺参りを繰り返した。
・歎異抄を、隈なく読み込んだ。
・幾度となく、お布施をした。
・毎月、境内のお掃除も手伝った。
なんにも、御利益はなかった。

やむなく、神社参りを繰り返した。
・狛犬にも、頭を下げた。
・奮発して、お札を投げ入れた。
・年行事の、お祭りを盛大に惹きたてた。
なんにも、御利益はなかった。

やむなく、教会のミサ通いを繰り返した。
・聖書の勉強会に、精を出した。
・バザーの前日、大量の古着を寄付した。
・一世一代、慈善活動にも参加した。
なんにも、御利益はなかった。

あてなく、それでも、多動の子の回復と平穏を祈るほかはなかった。

終わり

参考情報

●【まとめ記事】その他のショートショート(詩または掌編小説)

●【まとめ記事】マメタ家の紹介と近況報告

●【まとめ記事】毎日が辛い当事者へ

以上

2024年8月25日

香月 融